「芝居の月組」は一体どこへ向かって行くのか

以前、今の花組は「何の花組?」という記事を書いたのですが、
昔を振り返ることで組の新しい魅力に気が付いたり、納得できることが多々あったので…


同じく100周年を迎えた月組についても、
今までの歴史を追いながら、受け継がれてきたものについて考えてみたいと思います!

月組はいつだって挑戦してきた

花組が伝統を守るという姿勢なら月組は挑戦するという姿勢。
そんな感じでこの二組は結構対照的なイメージがあります。
実際できた当時から演目を比べていくと、経営側も徐々に組のカラーを意識して采配していった節がありますね。

男役の中で一番最初に髪の毛を短くしたのは9期生の門田芦子さんですが、月組出身ですね。

また宝塚歌劇の爆発的ブームを巻き起こした「ベルサイユのばら」や
未だ再演が多くされている「風と共に去りぬ」も月組が初演です。

特にベルサイユのばらの大ヒットはファンなら耳タコな話題かもしれませんが、
低迷期を迎えていた宝塚歌劇に黄金期をもたらしました。

1974年のベルばらの大ヒット。
まあそこまではよく知られた話ですが、1960年代という時代がどういう時代だったかみなさんご存知ですか?
1960年初頭は華麗なる千拍子や火の鳥の上演で高い評価を獲得した宝塚歌劇。
しかしその後はヒット作に恵まれませんでした。

また日本に翻訳ミュージカルが入ってきたのも1960年代です。
つまり日本国内の風潮として「海外」への関心がどんどん高まってきていた時期なんですよね。

そこで宝塚歌劇でも初のブロードウェイ作品の上演としてオクラホマ(月・星合同公演)。
また68年にはウエストサイドストーリー(雪組公演)など海外作品の上演を行い始めます。
そうして海外ミュージカルの公演の成功を皮切りに宝塚歌劇の評価がまた上がってきた時、

月組の「ベルサイユのばら」の大ヒットがあったわけなんですよね。

時代の潮流に合わせた作品を上演する時。その影にはいつも月組が居たんですね。

海外ミュージカルと月組

さて、月組は海外ミュージカルの初演が多いと言う話。
ファンの方ならもちろん知っていると思うのですが、
どの程度多いのか、海外ミュージカル初演の1967年から2021年の間で調べてみました。

初演年作品名上演組
1967オクラホマ!合同
1968ウェスト・サイド物語
1969回転木馬
1974ブリガドーン
1984ガイズ&ドールズ
1986三つのワルツ
1987ミーアンドマイガール
1988キスミーケイト
1989会議は踊る
1993グランドホテル
1996エリザベート
1996CAN-CAN
1996ハウトゥーサクシード
2004ファントム
2005※アーネストインラブ
2008スカーレット・ピンパーネル
2010※ロミオとジュリエット
20151789
2019I AM FROM AUSTRIA
2020アナスタシア
※は大劇場作品では無いが、再演が複数回されているもの

大劇場公演約20演目中宙組は2公演、花組は3公演、星・雪組は4公演、月組は8公演と、
実際他の組に2倍の差をつけて海外ミュージカルの初演をやっていることがわかりました。

中でもガイズ&ドールズや、ME AND MY GIRL、アーネストインラブ、グランドホテル など近年再演された海外ミュージカルの初演も月組だったとは。

まさに花組と対として出来た月組。伝統に対しての果敢な挑戦の象徴のような結果。
月組は都会的で時代の潮流にあった新しい雰囲気の演目が昔から多かったみたいですね。

あと調べてみて意外と面白かったのが、2000年までは雪組も海外ミュージカルの初演が多いこと。
和物のイメージがあったんですけど、
堅実に努力を重ねる雪組だからこそ挑戦する土台があったのかもしれませんね。
もしくは和物の雪組としての組カラーの確立がその頃だったのか。
また雪組について調べる必要が出てきた気がします。

芝居の月組

いつ頃から言われ始めたのか正直わからないのですが、
歴代月組トップさんのインタビューで組の特色を聞かれた際、
「月組の伝統として、「芝居の月組」というものがある」という回答が散見されるので、
ファンが言ってるというよりかは組内でもしっかり伝統として受け継がれているのがわかりますね。

2018年のエリザベート上演前の珠城さんのインタビューでも、
「芝居の月組」は歴代から受け継がれてきた伝統で、上級生の方々の誇りにもなっている。

というような回答がありました。
その伝統が受け継がれてきてるのって格好良いですね〜。

昔、カフェブレに出ていた月組出身86期の星条海斗さんも
宝塚歌劇100周年を迎える抱負として「伝統と挑戦」と言う言葉を挙げていらっしゃって
すごく「月組らしい」なと感じたのを思い出します。

先述の海外ミュージカルの項目でも挙げましたが、
どの組よりも海外ミュージカルの初演が多い組だからこそ、
乗り越えてきたプレッシャーの量も凄まじかったことでしょう。

また、海外ミュージカルの場合普段の宝塚の演出家の方が作るものと異なる演出が増えるので、
その分新しい経験をたくさん積めたのが月組なんじゃないでしょうか。

そうした積み重ねが「芝居の月組」の土台を形成していったことは間違いありません。

2000年ごろの真琴つばささんトップの時代の月組の都会的な雰囲気は、
2021年の今になって見てもとても鮮やかに映りますよね〜。

特にこの頃は今の「宝塚が大好き!!」というジェンヌさんよりも
「舞台は仕事」というスタイルのジェンヌさんが多かった時期で、
もちろん仕事人としての舞台は素晴らしいのですが、
やはりふとした瞬間の輝きは宝塚が大好きな人の方が輝いて見えるものというのも感じさせられます。

舞台を作るのは人であり心なんだな〜とじんわり暖かくなりますよね。

最近芝居の月組としての矜恃をすごく感じたのは珠城さんの退団公演の桜嵐記

月の輝きは太陽の光を反射して輝くものですが、桜嵐記はその光の一つ一つを組子全員が漏らさず捉え、
何倍にもして返して来るような眩しさで、本当に素晴らしかったです。

こうして今後の月組にも「芝居の月組」は受け継がれていくんだ、という継承を強く感じる舞台でした。
これからも、月組の素晴らしい伝統である「芝居の月組」のバトンが引き継がれる瞬間が、
そして様々な姿に形を変える変幻自在の月組のお芝居が、たくさん観られますように!

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