雪組のfff(フォルティッシッシモ)が終わってから約1ヶ月後に初日を迎えた
珠城りょうさん、美園さくらさんのご卒業公演。
その上月組を長く支えてきた紫門ゆりやさんと輝月ゆうまさんが今回公演を最後に専科へ異動。
これは観るっきゃない!!!ということで観てまいりました。
上田久美子先生×敗北×珠城りょうさん=最高
ということは月雲の皇子の時から知ってたんですけども、やっぱり圧倒的ですね。
一つの思いを貫くということの描写が圧倒的な上に、
登場人物に親近感が沸くような人間性の描写もあり、
気がつけばその役の心情が痛いほどに、観客に突き刺さるような舞台でした。
一本もののような重厚感、
大河ドラマを見終わったときのように終わった頃にはずっしりと心に重いものが残りました。
しかも何がすごいって南北朝について何も詳しくない人間にもスッと入ってくる導入部分。
どこまでも見事でした!!
ローマについて予習必須のアウグストゥスと比較すると対照的でしたね。
「桜嵐記(おうらんき)」のわかりやすいあらすじ
舞台は南北朝時代、朝廷が2つに別れ内乱が続いている時代。
幕開けと共に光月るうさんが演じる男が私たちを南北朝時代へ誘(いざな)ってくれます。
鎌倉幕府の討幕を行った後醍醐天皇(一樹千尋さん)と、その下についていた足利高氏(風間柚乃さん)。
後醍醐天皇は討幕後の朝廷にて公家を擁立したため、武士は排除され、やがて武士からの支持を失います。
最終的に離反した足利尊氏により後醍醐天皇は吉野へ逃げ、
京都で新たな天皇を立てながら実権を握る足利尊氏と、南朝の後醍醐天皇の勢力との対立構造『南北朝時代』に。
そして今回のお話は
簡単に言うと北朝の武士(足利尊氏) VS 南朝の公家(後醍醐天皇の意思を継いだ後村上天皇(暁千星さん))のお話。
一言でコンセプトをしっかり伝えてもらうと、なんともわかりやすいですね。
そして亡き後醍醐天皇の治める南朝に仕えていた数少ない武将、楠木正成(くすのき まさしげ)(輝月ゆうまさん)。
その息子である楠木正行(くすのき まさつら)もまた、父同様、南朝に使える武士。
今回の舞台は有名な楠木正成ではなく、楠木正行(まさつら)が主人公です。
息子たちは三兄弟で、それぞれ長男の楠木正行(まさつら)を珠城りょうさん、
次男であり、心が優しく、冷静な楠木正時(まさとき)を鳳月杏さん、
三男であり、やんちゃでありながら人の機微に敏感な楠木正儀(まさのり)を月城かなとさんが演じます。
そして後醍醐天皇が鎌倉幕府を討幕する折、
幕府の勢力によって処刑された公家、日野俊基(ひのとしもと)(朝霧真さん)の娘であるとされる
美しい公家の姫君、弁内侍(べんのないし)を美園さくらさんが演じます。
足利尊氏に仕え色欲に溺れる武将、高師直(こうの もろなお)(まさかの紫門ゆりやさん)の手により、
吉野から京都へ偽の手紙でおびき出された弁内侍は、
罠であると知りながらも父の仇を取らんと己が身を犠牲にする気でわざと京都へ向かいます。
吉野からの道中、高師直(こうのもろなお 紫門ゆりやさん)の思惑通り北朝の手勢に囲まれる籠、
籠を運んでいた百姓たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていきます。
籠から引きずりだされる弁内侍、百姓の一人であるジンベエ(千海華蘭さん)は震える足を抑えながらも、
なんとか見逃してくれないかと北朝の手勢に頼み込みます。
そこにたまたま通りがかった楠木正行(まさつら)(珠城りょうさん)が弁内侍を助けるところから話は始まります。
桜嵐記のそれぞれの役、見所ポイント
楠木正行(くすのき まさつら)/珠城りょうさん
珠城りょうさんの最後の役として素晴らしく当たり役ですよね。
誠実さと不器用さと内に秘めた熱さ。
確かに私たちが知ってる珠城りょうさんでありながら、しっかり舞台の役として生きる楠木正行。
これが珠城さんの男役としての集大成なんだと思うと胸が熱くなりますね。
一本筋の通った誠実さがあんなに全体から滲み出る人この世にいるんですか?
居た〜〜!!!今舞台上に居た〜〜〜!!!!!!って思いましたね。最高ですよ。
楠木正行は北朝と戦を行った際、敵方の兵たちを凍った川から救い出します。
彼らは小銭で雇われた百姓たち。長らく続く戦により不況が続き、
戦へ参加することでなんとか収入を得ようと集まったものたちでした。
それを知っている楠木正行は「彼らに北朝も南朝もない。」と救助を行います。
周囲の百姓たちからも慕われており、楠木陣営に自身の農作物を差し入れしてくれるほど。
敵味方関係なく、同じ窯の飯をつつく場面で朝陽つばささんの掛け声と共に
河内の国に伝わる「楠木の歌」の大合唱が始まります。
一回目観た時は「あ〜慕われてるんだな〜」と思ってたのに二回目あんな泣けるなんて。
世界一泣けるどっこいせ。あ〜〜どっこいせ(号泣)
兄弟たちはおろか、治める土地の人々からも慕われているわかる心が強くて優しいお兄さん。
そして、たくさんのことを我慢して飲み込みながら、父と同じく南朝に使える武将。
自分を殺して生きる彼が本当の気持ちを吐露するシーン、
そこにきてようやく河内弁が出る演出が
もう最高に心待ちにしていた瞬間でたまりませんでした!!!!たまきちさん・・・涙止まらんわこんなん。
弁内侍(べんの ないし)/美園さくらさん
強がり×美園さくらさん=最高
無限無双のお通もそんな役どころでしたが、
ほぼ「武蔵さん・・・」のバリエーションで彩られていたように思うので、
今回の演目で存分なお芝居が見られて嬉しかったです。いや様々なバリエーションでの武蔵さんも良かったですよ。
弁内侍さまは歌うように話すんですよね。これ絶対わざとだろうな〜と思って観てたらやはりパンフレットに
その話し方についても書かれていました。素晴らしかった・・・。
当時の公家の娘さんってどう考えても心情を好きに吐露したりできず、歌で心を伝えるじゃないですか。
だから心情を吐露する時はやはり歌のようなイントネーションで会話をされるんですよね。
復讐や憎しみの心をしっかり秘めて生きている姿が痛ましいのと同時に、楠木正行に出会ってから
その心が年相応な感じにどんどんとき解されていくさまがもう〜〜〜〜良かった。
後村上天皇(暁千星さん)に楠木正行との婚約を勧められるシーン。
楠木正行は先行きが短いとわかっているのにどうしてそんな契りができようかといった歌で返します。
大切なものを失う弁内侍はもう見たくないということですね。
その優しさに対して弁内侍が微笑みながらしずかに涙を流すんですよ・・・。毎回泣いてるんですよ・・・。
もうその涙をオペラ越しに見たとき、胸に詰まる思いが大きすぎて本当にウッてなりましたね。
弁内侍は最終的に楠木正行の魂を弔うため尼僧となったと言われています。
南北朝の終わりを迎えるその日まで、ひたむきに楠木正行の人生と向き合い続ける深い愛について考えるともう。
楠木正儀(くすのき まさのり)/月城かなとさん
戦場は俺の遊び場や〜〜!!!!
なんてやんちゃに登場して、物語の中でもちょっとお笑い担当な部分がある(というか兄二人が真顔でボケるので必然的にツッコミ担当みたいになってる)役どころで、
豪放磊落(ごうほうらいらく)という言葉が似合う快活な人物でした。どこかにくめない末弟です。
なんだかれいこさんらしいですね。
戦が好きな割に情に厚く、自分の意思をしっかりと持っているところは
さすがお兄さんと似てる感じが良かったですね。
四條畷の戦の場面で目をギラリと光らせ、猛将として武器を振るうところを見ていると、
この人も武将なんだな・・・と改めて時代の厳しさのようなものを感じさせられます。
何より、そんなやんちゃな感じの三男が最終的にただ一人生き残り、
そして南北朝を合一する人になると思うともう登場から切なくて泣けます。
泣きにきてんのか?と思うくらい泣けるポイントが多すぎる。昔の人大変すぎる。
最終的に死にかけの楠木正行を、その遺言にしたがって戦場に置いていくときの
「しゃ〜〜ないのう!!!」に乗せられた感情がもう胸が締め付けられてどうしようもない気持ちに。
そして老年の正儀とのつながりを感じさせる話し方やそぶりを細かく感じられるところに
さすが時期トップさんだなという実力を感じますね。これからの月組もとっても楽しみにしています!!
何より、河内弁完璧やないか〜〜〜い!!!!こんなに違和感無く話すなんて、素晴らしすぎる。
楠木正時(くすのき まさとき)/鳳月杏さん
兄と弟とは対照的にちょっと現代的な感覚を持った男性として演じられていました。
兄弟で唯一結婚しているお兄さん。これまた、ちなつさんにぴったりの雰囲気なんですよね。
すんごいカッコよく登場したとおもったらめっちゃデカい猪の味噌焼きを完成させてドヤるシーンは
鳳月さんだからこそできる大きなボケだったなと思います。
さすが上田久美子先生、笑いの真髄を理解していらっしゃる。
私も猪を丸焼きにするときは矢を放ってその溢れ出る肉汁が透き通るかどうかで火が通ったか判別したいと思います。
ようやくシリアスに声を上げたと思ったところが出汁を捨てようとする弁内侍を止めるシーン。
大根を叩き割る弁内侍。猪に夢中な蘭尚樹さん。
弁内侍さまも料理が板に付いてきた!!と見当違いなことを大声で言う楠木正行。首を振る正時。
見てるだけでこちらも笑みがこぼれます。
食事シーンで自ら進んで配膳をする楠木正儀さん。いやもう野戦の食事シーン見るところが多すぎる。
妻の百合と向き合うシーンはついつい二人の世界に入りがち。
ちょっとボーッとした雰囲気とキリッとした雰囲気の切り替えがさすが素晴らしかったですね。
そして百合と敵同士となってしまうシーンでは百合を思って離縁する楠木正時。
四條畷の戦いで太田親子(春海ゆうさんと英かおとさん)に再会し、百合が自決したことを聞いたあの表情。
そこから命を失うまでの姿、全てが急に儚く見えて、
それまで平和なシーンで出ることが多かった故に亡くなる瞬間の
「妻が待っているのでな、御武運を。」
の一言が一気に際立ちます。
高師直(こうの もろなお)/紫門ゆりやさん
いや今回の公演、紫門ゆりやさんどこにいるのかな????と思ってたら高師直(こうのもろなお)!!!!
姿だけでは完全にわかりませんが、声でようやくあっ!!紫門さんだ!!!と気づくレベル。
まさかの色欲に溺れた猛将。晴音アキさんの手をさする手がめちゃくちゃやらしい!!すごい。
これだけ上級生になってからまだ幅が広がるのかと圧倒されました。
月組の男役として芝居にかける心の矜恃を見せつけられましたね。
ショーではいつも通りのロイヤルなお姿で安心しました。本当にすごい。今回の演目で一番衝撃的でした。
あんなに地の底から響くように笑えるんだなとか、華奢なはずなのにそう見えない足捌き、
つまらないことをいやらしい感じで見るときの手の所作、
出ている場面ではついついオペラで追ってしまうほどに存在感を放っていました。
場を支配するような圧倒的な存在感を放つところを見ていると、さすがだ・・・。と思いましたね。
紫門さんといえば新撰組フリークス。歴史物に対する造詣の深さや、
武士に対する思い入れなどきっと元からおありになられたのかなと思います。にしても本当にすごかった。
すごいしか言えんのか私はと思うほどすごいしか言ってないけど本当にすごいから見てほしい!!!
後醍醐天皇(ごだいごてんのう)/一樹千尋さん
圧倒的存在感、これが専科の、59期生の力・・・!!どう見てもラスボスです。
呪われたアホども(楠木正儀談)と言われてますが、
いやこの人に呪われたら従わざるを得ないでしょ!!と思うほどに恐ろしい。
神々の土地で言うラスプーチンのような存在感、死してなお生者に影響を及ぼし続ける。
そんな圧倒的なラスボスキャラを生み出すの得意なのかな上田先生。
登場シーンの音がデカいので毎回心臓が飛び出るくらいびびる。
あの日野俊基(ひの としもと/朝霧真さん)、北畠顕家(きたばたけ あきいえ/夢奈瑠音さん)、
楠木正成(くすのき まさしげ/輝月ゆうまさん)が死ぬシーンの回想が
本当に生き残った人たちの感情がダイレクトに伝わってくるような演出で鳥肌が立ちましたが、
それには一樹千尋さんの怪演あったからこそだと思います。
あのシーンがあったから北畠親房の心が、弁内侍の心が、
後村上天皇の心が、阿野廉子(あの れんし/楓ゆきさん)の心が客席に伝わるんですよね。
今までただ名前だけ頭に入っていた登場人物が一気に輪郭を帯びて、立体的な感情を持って迫ってくるんですよ。
後醍醐天皇の残した「玉骨(ぎょっこつ)はたとえ南山(なんざん)の苔に埋るとも、魂魄(こんぱく)は常に北闕(ほっけつ)の天を望んと思ふ」
アルミホイル並みに平たく言うと南朝で死んでもワシャ魂は京を目指しとるんじゃ!!!という意味ですね。
劇中この言葉が何回も出てきます、そうして後村上天皇の決意は揺るがないものになります。
いや〜本当にすごい存在感だった、後醍醐天皇。これからも忘れないと思います。
ジンベエ/千海華蘭さん
なんであんな普段のお顔はとっても可愛らしい感じなのに舞台に上がると
一気に場を締める存在になるんでしょうか。
ショーで踊ってるときはめちゃくちゃカッコイイし、本当にすごい。
周囲を巻き込む凄まじい力みたいなものが芝居でいかんなく発揮されてました。
たまたま弁内侍を運ぶ役割で小銭で雇われたジンベエ。
そんな身分でも北朝の手勢に対し、震えながら立ち向かいます。
そこを通りがかった楠木正行に助けられ、彼は楠木正行についていくようになり、やがて武士になりたい。
楠木正行のために働きたいと志願をし、弁内侍を送り届ける護衛の役目を賜ります。
ジンベエが言うことは私たち客席の言いたいことの代弁みたいな内容が多いんですが、
だからこそ私たちはジンベエに親しみを持つってわけじゃなくて、
やはりセリフ以上に出る人間味が私たちに親近感を与えてるんだと思います。
そのあたりがさすがですよね。
ダルレークの恋やピガール狂騒曲なんかでもちょっとおとぼけみたいな要素を入れつつ、
説得力がしっかりある芝居をされていた姿が印象的でしたが、今回も表現力が凄まじかったです。
何より40年後になっても弁内侍に仕えていて、当たり前のように温めた草鞋を懐から出すんですよね。
何年経っても変わらぬ忠義を貫き通すジンベエの姿を見ていると、
彼も楠木正行が取り立てた立派な、誰より立派な「武士」なんだなと思い涙があふれます。
楠木正成(くすのき まさしげ)/輝月ゆうまさん
背中で語る父親としての姿、猛将として敵に立ち向かう姿。
言葉がなくてもその存在感って圧倒的に出せるんだなと輝月さんの表現力を大きく感じました。
三兄弟が戦う四條畷の戦いのシーンの回想で、民の耕し収穫し作った干し飯を分け与え、
「もろうた時と命をどう使うか」と言う言葉を残します。
その言葉が大きなポイントとなって、楠木正行が自分の命の使い道を心に賭すシーンがまた胸に迫るものがありましたね。
河内に伝わる楠木の歌。それを歌う楠木正成と戦場で立ち振舞う楠木正行。
この二人の舞台上の対比が、
静かで、けれど喧騒も感じられ、ただ寂しく美しく、そんな気持ちが内混ぜになって涙が止まらないシーンでした。
表現者として存在感が素晴らしい輝月さんが月組から異動になってしまうのは寂しいのですが、
他の組でまた新たな役に出会われると思うとその姿を見るのが楽しみで仕方ありません!!
本当に素晴らしい存在感でした・・・。まゆぽんさん・・・どの組に出ても注目します!!
後村上天皇(ごむらかみてんのう)/暁千星さん
耐えて耐えて耐え忍ぶ静かな役よりこれまで感情を出す役の方が多かったありちゃんが天皇役となると、
どんな感じになるのかな〜とワクワクしていたのですがかなりハマり役でしたね。
何より、天皇はいろいろなことを自由に口出しできない立場になるので、
表情によるお芝居がとても豊かである必要があると思うんですが、
耐え忍ぶ表情も、許してくれと楠木正行に言う時のなんとも言えない微笑みも、弁内侍に嫁入りを進める時の優しい微笑みも全てとても機微に溢れ、豊かでしたね。
心優しくありながらも、父帝の意思を継ぎ戦いをやめる選択肢を持てない葛藤。
本当は誰にも死んで欲しくないと言う願いを秘めながらも、しかし北朝との戦いを続けることが自分の責務であると心に決めているのがわかる表情。
もう戻れないとわかっている正行に「戻れよ」と声をかける声色。セリフ以上にしっかり溢れてくる感情表現が素敵でした。
足利尊氏(あしかが たかうじ)/風間柚乃さん
相変わらず研究科15年か???と思うほどの貫禄を放つおだちん。
しかもそこに甘んじず日々研鑽されていることがしっかりわかるどっしりとした声色。立ち姿。
上級生を従えるような役どころでも全く違和感がない存在感。見事でしたね!
セリフはそこまで多くないにもかかわらずその存在感と言い放つ一言一言の重みが素晴らしかったです。
月組の未来を担いまくるスターさんだな(もうめっちゃ担っておられますが)と思いながら観てました。
「木はそう簡単に倒れるかな。」「木は必ず倒れます。」の高師直との掛け合いも素敵でしたね。
楠木家に直接スカウトしにくる時も、比較的物腰は穏やかながら、
逆らうことを完全に望んでいない感じが良かったですね。
立場以上に楠木三兄弟のことをしっかり買ってたことがわかる感じがなんとも。
ただ敵となった以上徹底的に、冷徹に潰しにかかってきそうな怜悧さも感じられて素敵でした。
北畠親房(きたばたけ ちかふさ)/佳城葵さん
過去の公演(月雲の皇子や宇月颯さんのディナーショーMOON SKIP、BADDY etc)から、
上田久美子先生ならきっとヤスくんに重要な役所を与えるのではないかな〜と思って
密かに楽しみにしていたのですが、想像以上に複雑でどっしりとした役どころでした。
北畠親房は後醍醐天皇亡き後、後村上天皇の父親がわりのような役割で帝を支えてほしいと
阿野廉子に頼まれますがそこに至るまでの経緯がもう。
和睦を結ぼうと提案する楠木正行に対し、周囲の公家に突っ込まれるほど必要以上に強くあたる北畠親房。
回想にて過去の戦いで武将として戦った息子、
北畠顕家(きたばたけ あきいえ/夢奈瑠音さん)へ援軍を送るよう後醍醐天皇に頼むも、
平然とつっぱねられたシーンが入ります。
その時の背中の寂しさと、息子を失って言う「顕家!!立派に死んだ!!」の言葉がなんとも言えません。
それだけの覚悟を持って帝に仕えている手前、南北の和睦など納得いかないのも必然か、
と絶妙な感情にさせられます。この役どころに対して感情移入させる上田久美子先生の演出と、
圧倒的な演技力とセンスをもった佳城葵さんの表現力に月組の強さを感じましたね。
あんな菩薩みたいな顔で微笑むような人が舞台の上では立派な父親になるんだからすごいよな〜と
今更な感想を抱いてしまいました。
晴音アキさんと白雪さち花さん
いやいやもう最初の方に高師直とめちゃくちゃ濃い絡みをしたと思ったら、河内の百姓の中に現れたり、
楠木正行の前でふんぞり返る公家になったりと、凄まじい活躍ぶりでしたね。
娘役さんとしてのキャリアが素晴らしいお二人ですが、
まさか今回芝居で公家のおじさんをやることになるとは思っても見なかったのではないかなと思います。
私自身このお二人が支えている月組のお芝居がすごく好きで、どこに登場されるかいつも楽しみにしているので
また新鮮なお役どころを拝見できて幸せでした。
歌えるし、芝居もできるし、可憐にもなれて、力強い女役さんにもなる・・・。
各組ただ可愛いだけではない娘役さんがたくさんおられますが、これからも大切にしてほしいですね・・・。
(一体誰の立場でモノを言ってるのかな。)
桜嵐記ストーリーの感想など。
いやまだこの記事書くの!?って感じなんですが、
なんて言うのかなただ負けの美学みたいな描き方をしない上田久美子先生の厳しい表現が好きなんですよね。
新撰組ものなんかでよくある負けの美学みたいな描きかたじゃないんですよね。
華々しく散って行った・・・だけで終わらないものがある、本編にもありましたが、
歴史は点じゃなくて流れなんですよね。大きな流れで出来ている。
だから楠木正行もこれまでとこれからをつなぐ流れの一つとして存在していたし、
どこまでも泥臭くて人生観があって、やはり死にたいと心から願える人間はいないんだと感じさせる芝居で。
もちろん現実はもっと泥臭い感情があると思うので、
特に欲求というものを極限まで宝塚の成分で中和された泥臭さであることは重々承知なのですが、
それでもってすごく迫ってくるお芝居ができるって素晴らしくないですか?
もうあの〜何よりもう楠木の歌ですよね。簡単な言葉で百姓たちも歌える歌詞でありながら、
簡単な言葉であるからこそ真に迫る強さがあるんですよ。本当に突き刺さる。
大人と子供の対比みたいな描き方は星逢一夜にもあったと思うんですが、
幼少期と大人のコントラストをくっきりとつけることで、
その人が歩んできた「人生」っていうものが急にリアルになってくる。
こんなに歩んできた人生があるのに終わってしまうっていうことが目の前にあって、死ぬことはもうすでに決まっていて、どうしようもないことであるのにどうしてこんなに悲しいんでしょうか。
珠城りょうさんや美園さくらさん、その他の退団者のみなさま、そして専科へ異動する方々。
全ての想いや矜恃のぶつかり合い、表現の力。この時代で今この状況だからこそ感じ取れるものがたくさんある素晴らしい舞台でした。
何より出陣式、あんなにあの場に立つ一人一人の想いが伝わる場面ありますか?
拍手で迎え入れる客席の心すら演出のうちのような美しさ、そして限りを知り、命を知った表情の楠木正行。
どうか千秋楽のその日まで無事に幕が開くことを願って止みません。
そして全員が舞台に立てて、オーケストラが居る舞台がこんなに重厚感あふれるものだったとは。
再認識させられました。たまさくコンビもこれで見納め・・・。
これまで素晴らしい舞台を、ありがとうございました!
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